前巻から少しづつ暴力行為が起こり始め、物語は嫌な方向、嫌な方向へと大きく進み続け始めたのだけれども、四巻目ともなるともはや後戻りが効きそうもないところまできている感じがする。
酒乱だった男は衆人環視のなかで泥酔し、かつて自らが犯した罪と同じ行為を繰り返す。またある者は自分が受けた暴力の仕返しをしようとする。その一方で、市長のもとには、このプロジェクトの立案者が再び、意味ありげな雰囲気を醸し出しながら訪れ、市長を困惑させる。はたして、このプロジェクトの立案者は市長が想像したとおりの人間なのかそれとも、それは市長の妄想にすぎないのか。
さらには一般市民、といってもこのプロジェクトの関係者ではあるが、直接の関係がない人たちも巻き添えを食いはじめる。事態はどんどんと悪くなっていく一方なのだが、その中で登場人物の一人はわずかながらも希望への道筋がみえそうなことをつぶやく。それは本当に希望への道筋なのかどうなのか。
そして、この町では、かつて罪を犯した者達だけが問題を起こしているわけではなく、もともとこの街に住んでいた住民の中にも罪を犯し始める人達がいて、一概に過去に罪を犯した者たちだけが悪いという方向の物語ではないというところが、読んでいて息苦しく、救いがどこにあるのか見えない物語になっている。
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