日本沈没　第二部

小松左京であっても一人では書き上げることの出来なかった「日本沈没　第二部」を谷甲州とタッグを組んで書き上げたということで期待と不安が入り乱れておりました。
そりゃ、「日本沈没　第二部」の第二部ですから期待しない方がどうかしているし、かといって書かれてから三十三年も経った今、沈没したままで止まってしまった作中の歴史を今現在の世界情勢に無理なく結びつけることができるのか、不安になります。それが出来なければ沈没させた意味がないのですから。
しかし、そんな心配は杞憂でした。
文章はやはり谷甲州の文章で、状況説明や情景描写が多く、小松左京の文章に比べて会話がかなり少ないのですが、それでも後半は小松左京が半分乗り移ったかのようで、やっぱりこれは小松左京の世界だと実感できました。それだけに、熱いディスカッションに乏しいのが少し残念で、冷静になって振り返れば、負債となったままの「日本沈没　第二部」をとりあえず残務整理したという感じもしないでもありません。特に皇室に関してはまったく触れられていないし登場すらしないあたりは触れたら最後、収拾がつかなくなってしまうからじゃないだろうか。そういう視点で見始めると、やはり省ける部分は徹底的に省略してとりあえず始末をつけたという感もあります。
まあ、派手な見せ場は第一部で終わってしまっているので、第一部に比べれば地味な雰囲気になってしまうのは構成上やむを得ないのでしょう。最後は第三部へつなげる展開で終わらせているし、小野寺達のその後の生活の様子は読んでいて泣けるし、二十年以上待ち続けた結果としてはこれ以上望んだら罰が当たりそうなくらい申し分ない終わらせ方。感無量ですから文句は言いません。
しかし、あとがきが非常に悲しい。
かつて、

星新一や矢野徹がこの惑星へのルートを開拓し、福島正実が青写真を描き、小松左京が万能ブルドーザーで地ならしし、光瀬龍がヘリコプターで測量し、眉村卓が貨物列車で資財を運び、筒井康隆が口笛を吹きながらスポーツカーで乗りこみ……

とまで言われていた小松左京なのに、執筆できない体となってしまったと自らが書いた文章を読むのは切ない。