石黒 達昌著
おお、これはSFマガジン オールタイムベストの日本人作家短編部門に「人喰い病」を挙げたオレへのご褒美なのか、はたまた祈りが通じたのかと大いなる勘違いをしてしまうほどうれしい一冊。
分かりやすいレムと言うべきか、レムから難解さとこぼれ落ちる思弁性とユーモアを取り除いたらこうなりそうな気もするけど、こんなにも取り除いたらレムじゃなくなるか。
いや、なんというか、この人にかかったら「ソラリス」だろうが「天の声」だろうがかなり満足いくまで明確な回答をだしてしまいそうな気がするんですよ。そしてその上でコンタクトは不能になる。
あるいは根底を貫く理系の視点と姿勢は冷たさを持ちながらも非常に詩情的で美しく、アーサー・C・クラークと共通する部分があったりします。そんな石黒達昌の、対象物を描き出していく視線と過程は読んでいてゾクゾクしてくるのです。あとはどこからともなく漂ってくる死や滅びの香り。
ベストは「冬至草」と「目をとじるまでの短い間」あたりになるんだろうけど、個人的に一番好きな話は「希望ホヤ」です。娘の命と引き替えにある生き物を絶滅させてしまう話しなんだけど、娘からも生き物からも全てから距離を置いたジャーナリスティックなというか冷徹な視点のラストが何ともいえなく素晴らしい。
それにしても、ハルキ文庫の「新化」も「人喰い病」もいつのまにか絶版になっていたとは……。
分かりやすいレムと言うべきか、レムから難解さとこぼれ落ちる思弁性とユーモアを取り除いたらこうなりそうな気もするけど、こんなにも取り除いたらレムじゃなくなるか。
いや、なんというか、この人にかかったら「ソラリス」だろうが「天の声」だろうがかなり満足いくまで明確な回答をだしてしまいそうな気がするんですよ。そしてその上でコンタクトは不能になる。
あるいは根底を貫く理系の視点と姿勢は冷たさを持ちながらも非常に詩情的で美しく、アーサー・C・クラークと共通する部分があったりします。そんな石黒達昌の、対象物を描き出していく視線と過程は読んでいてゾクゾクしてくるのです。あとはどこからともなく漂ってくる死や滅びの香り。
ベストは「冬至草」と「目をとじるまでの短い間」あたりになるんだろうけど、個人的に一番好きな話は「希望ホヤ」です。娘の命と引き替えにある生き物を絶滅させてしまう話しなんだけど、娘からも生き物からも全てから距離を置いたジャーナリスティックなというか冷徹な視点のラストが何ともいえなく素晴らしい。
それにしても、ハルキ文庫の「新化」も「人喰い病」もいつのまにか絶版になっていたとは……。
コメント
もう、お読みで。
石黒さんは、いいですよねぇ。
私は、もっと注目されてしかるべきだと思っているんですが。
そうですか、絶版。
ハネネズミ、大好きなんですけど。
石黒さん情報ですが、2007年にハネネズミが英訳出版されるそうです。
ロシアでは既に出版済みだとか。
海外での評価の方が高そうな作家ではありますよね。
はい、読みかけの本を中断して早速読みました。
今回はいろいろなタイプの作品が収録されていて堪能させていただきましたよ。
英訳出版の話はあとがきでも触れられていたんですが、海外でも評価されるといいですねえ。
この作家は、ついこないだ『人喰い病』を読んだばかりなのですが、かなり感銘を受けました。会話が少なくて、地の文ばっかりなのがちょっとどうかと思いますが、なかなか面白いのは確かですね。
「分かりやすいレム」ですか。僕は「頭のいいラヴクラフト」みたいな感じを受けました。
『冬至草』も面白そうなので、読んでみたいと思います。
>会話が少なくて、地の文ばっかりなのがちょっとどうかと思いますが
そこがいいんですよ、研究記録もしくは報告書みたいな理系の文章が(笑)
ラヴクラフトは読んだことがないのでちょっとピンとこないのですが、「新化」を読んだときは読者に媚びないマイケル・クライトンだと思いました。
冬至草 石黒達昌
ハヤカワJコレクションといえば、SFファンにはお馴染みのSFの老舗早川書房から出版されている、1990年代以降に本格デビューした日本人SF作家の作品を収録しているシリーズで、ラノベ全盛の今にあっては貴重な存在であるといえるのではないでしょうか。
読みましたよ。
面白かったです。
私は「月の・・・」が好きですね。
ユーモアが感じられて。
嘘八百を嘘とさせないところがレム的ではありますね。
そういったトンデモは大好きなので、石黒氏のような作家が日本にるということが嬉しいです。
あ、今、日本にはいないのか。
「月の……」が良かったという人も結構いるようですね。
私は、未知なるものがある種の幻想性を保ったままきれいに解体されていく話の方が好きだったので、ちょっと物足りなかったんですよ。