『婢伝五稜郭』佐々木譲

  • 婢伝五稜郭
  • 著: 佐々木 譲
  • 販売元/出版社: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/10/8

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佐々木譲の<五稜郭>三部作の三作目。もっとも三部作といっても時代背景が同じというだけでそれぞれの物語にはつながりはないので、この先、作者が五稜郭を主題にした物語を書かないとは言い切れないので三部作と言ってしまっていいのかどうかはわからない。
かくいう僕自身も『五稜郭残党伝』しか読んでいなかったし、そもそも『五稜郭残党伝』を読んだ時点では三部作になるということも知らなかったので、書店で『婢伝五稜郭』とタイトルのついたこの本をみて驚いたぐらいだった。
映画『明日に向かって撃て』を彷彿させるような物語、函館戦争の時代を舞台にして和製西部劇といった趣のあった『五稜郭残党伝』は、佐々木譲の作品の中で、もっとも好きな話だったので、五稜郭とタイトルに冠したこの『婢伝五稜郭』が『五稜郭残党伝』を読んだ時のワクワク感を与えてくれるのか少し不安でもあった。
物語が始まって早々の殺戮劇、重要そうに見える人物が次々と殺されていく有り様は、この先この物語がどんな方向へと進んでいくのか不安にさせられるほどの血みどろさだったのだが、それ以降の展開はわりとおとなしめで、それは女性が主人公というせいかもしれないが、テンポよく進む。
歴史的な事実とてらし合えば、主人公の行末は必ずしも幸福な道筋ではないのだが、そのあたりは曖昧なまま余韻の残すラストになっているところで、物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、これはこれで良い終わり方なんじゃないかと思う。
次は、三部作の二作目『北辰群盗録』を読まねば。

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