少し前に文庫化された『竜が最後に帰る場所』という本が気になったのだが、講談社の文庫本は基本的に翌月に電子書籍化されるので、電子書籍化された時に読んでみようと思い、とりあえずその前に恒川光太郎の本は読んだことがなかったので予習的な意味合いも含めてデビュー作の『夜市』を読んでみた。
日本ホラー小説大賞受賞作だけれども、ホラーというほど怖い話ではなく、民族学的な雰囲気を持つ幻想小説といった感じで、僕の好みからはちょっとばかり外れてはいるけれども、こういう雰囲気の物語であれば他の小説も読んでみたいと思わせる味わいの物語だった。
「夜市」という人外の生き物達が店を構える市場がある。主人公は友人に連れられてこの夜市に行ってみることにするのだが、そこで友人の過去にまつわる話と、夜市における様々な決まり事の間の中で不思議な体験をさせられるハメになる。夜市における決まり事はルールでありそのルールの中でいかにして自分たちの目的を実現させるかという部分においては論理的な展開があり、併録された「風の古道」においても同じようなルールの中でいかにその制約からのがれるかという部分があって、この世の条理とは異なる世界の条理の部分が面白い。
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