辻原 登著
不勉強ながら辻原登という作家を今まで知りませんでした。しかし、そのまま見過ごさずに済んでよかったというか、まだまだ自分の知らないところで面白い話を書いている人がいっぱいいるんだよなあ。
六つの短編が収録されたこの本、どの話も変な話です。冒頭の「ちょっと歪んだわたしのブローチ」は明日から一ヶ月間、愛人と一緒に暮らしたいといって出て行ってしまう男の話。男の妻はそれをあっさり許すのだが、しばらくして二人の部屋を突き止め、向かいの建物に部屋を借りて観察し始める。同じカーテンを掛け、同じ花を飾り、やがて同じタイミングで花が枯れるという奇妙な共時性が起こりはじめる。
「水いらず」では妻の妹の発する臭いに欲情して妻の妹をレイプしてしまった男の話。それだけでも変な話だけれどもこの作者、予想もつかない変な設定を持ち出してきます。妻の妹の発する臭いは、愛する人が亡くなったときのみ発生する臭いで、しかもその臭いが解るのはごく一部の限られた人間だけ。そして妹の旦那は臭いが解らないことに嫉妬するのです。
最高に変な話は「ザーサイの甕」かもしれない。公園の金魚の話から舞台は中国へと移り金魚の歴史が語られる。金魚の飼育にザーサイの甕が使われたことからザーサイの話へ移り、ザーサイが日本に輸入される話になると同時に金魚も日本へと渡り、再び舞台は日本へと移る。ザーサイを輸入している会社の好景気と不景気。そして再び金魚とザーサイが会合する結末は読んでいて目眩がしそうなくらいです。まるで言葉と戯れているような味わいです。
表題作の「枯葉の中の青い炎」は、変さ加減では「ザーサイの甕」よりも劣るけど野球のスタルヒン投手の300勝達成試合にまつわる歴史秘話。チームは弱小、スタルヒンはもう疲れ切っており今日の試合を逃したら敬愛するスタルヒンが300勝を達成するのは不可能だと思ったチームメイトのアイザワススムは、試合のさなかふるさと南洋の島に伝わる呪術を使うことを決意する。しかしその呪術はふるさと以外の場所で使った場合、災いがふりかかるという。
奇跡よ起これ、どんな災いが降りかかろうとも。
スタルヒン投手は300勝を達成し、そして災いも降りかかる。
どこまでは事実で、どこからが虚構なのかよくわからない、いやたった一つの行為以外はおそらく全て事実なのだろうけれども、事実の中に巧みに虚構を組み込む手腕は、魔法を見せられた気分でもあります。
六つの短編が収録されたこの本、どの話も変な話です。冒頭の「ちょっと歪んだわたしのブローチ」は明日から一ヶ月間、愛人と一緒に暮らしたいといって出て行ってしまう男の話。男の妻はそれをあっさり許すのだが、しばらくして二人の部屋を突き止め、向かいの建物に部屋を借りて観察し始める。同じカーテンを掛け、同じ花を飾り、やがて同じタイミングで花が枯れるという奇妙な共時性が起こりはじめる。
「水いらず」では妻の妹の発する臭いに欲情して妻の妹をレイプしてしまった男の話。それだけでも変な話だけれどもこの作者、予想もつかない変な設定を持ち出してきます。妻の妹の発する臭いは、愛する人が亡くなったときのみ発生する臭いで、しかもその臭いが解るのはごく一部の限られた人間だけ。そして妹の旦那は臭いが解らないことに嫉妬するのです。
最高に変な話は「ザーサイの甕」かもしれない。公園の金魚の話から舞台は中国へと移り金魚の歴史が語られる。金魚の飼育にザーサイの甕が使われたことからザーサイの話へ移り、ザーサイが日本に輸入される話になると同時に金魚も日本へと渡り、再び舞台は日本へと移る。ザーサイを輸入している会社の好景気と不景気。そして再び金魚とザーサイが会合する結末は読んでいて目眩がしそうなくらいです。まるで言葉と戯れているような味わいです。
表題作の「枯葉の中の青い炎」は、変さ加減では「ザーサイの甕」よりも劣るけど野球のスタルヒン投手の300勝達成試合にまつわる歴史秘話。チームは弱小、スタルヒンはもう疲れ切っており今日の試合を逃したら敬愛するスタルヒンが300勝を達成するのは不可能だと思ったチームメイトのアイザワススムは、試合のさなかふるさと南洋の島に伝わる呪術を使うことを決意する。しかしその呪術はふるさと以外の場所で使った場合、災いがふりかかるという。
奇跡よ起これ、どんな災いが降りかかろうとも。
スタルヒン投手は300勝を達成し、そして災いも降りかかる。
どこまでは事実で、どこからが虚構なのかよくわからない、いやたった一つの行為以外はおそらく全て事実なのだろうけれども、事実の中に巧みに虚構を組み込む手腕は、魔法を見せられた気分でもあります。
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