偶然、斎藤美奈子の「文章読本さん江」という本の存在を知りました。「日本語の作文技術」の評判を調べていくうちに見つけたので偶然でもないのですが…。
少し前に同じ作者の本を読んでいたので、この本の存在を知っていてもおかしくはなかったのですが、興味がない分野には眼がいかないものです。ある意味、興味がないものはこの世に存在しないのと同じでもあったりします。
なんて、妙に哲学的な話を持ち出しましたが、哲学的な話をするつもりはありません。
そもそもこの本、あまたの文章読本を評論した本です。
それにしても、世の中にこんなにもたくさんの文章読本が存在しているとは知りませんでした。なんとその数、四桁にも登るそうです。そんな中、「日本語の作文技術」を書いた本多勝一は文章読本新御三家の一人とされています。御三家が、谷崎潤一郎・三島由紀夫・清水幾太郎で新御三家は、本多勝一・丸谷才一・井上ひさしです。
でも斎藤美奈子は御三家だろうが新御三家だろうが容赦なく切り捨てていきます。あまりにも面白いので、「日本語の作文技術」と併読して読みましたよ。おかげで「日本語の作文技術」の八章以降が格段と面白くなりました。
しかしなんといっても文章のプロを、文章のプロ(フェッショナル)とせずに文章のプロ(レタリアート)とする慧眼には参りました。思わず私も、これからはプロという意味を使い分けるようにしようかと思ってしまいましたよ。
で、肝心の文章はうまくなったのかに関してですが、そりゃあんた読んだだけじゃうまくなんてなりませんよ。読んだだけじゃ。
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本「文章読本さん江」
(ちくま文庫、斎藤美奈子) ※ はじめに Ⅰ サムライの帝国 書く人の論理ーー文章読本というジャンル 静かな抗争ーー定番の文章読本を読む Ⅱ 文章作法の陰謀 正論の迷宮ーー文章読本の内容 階層を生む装置ーー文章読本の形式 修行の現場ーー文章読本の読者 Ⅲ 形式主義の時代ーー明治の作文教育 個性化への道ーー戦前の綴り方教育 豊かさの中でーー戦後の作文教育 Ⅳ 下々の逆襲 スタイルの変容ーー文章読本の沿革 様々なる衣装ーー文章読本の行方 あとがき 追記『文章読本さん江』その後 文豪、名文家が書いた「文章読本」を、 ちょっぴり茶化しながら分析した。 文章を書くとはどういうことかを考えさせる本。 文章読本の「5大心得」、「3大禁忌」、「3大修行法」が面白い。 「5大心得」とは 1 分かりやすく書け 2 短く書け 3 書き出しに気を配れ 4 起承転結にのっとって書け 5 品位を持て 「3大禁忌」とは 1 新奇な語(新語・流行語・外来語など)を使うな 2 紋切り型をつかうな 3 軽薄な表現はするな 「3大修行法」とは 1 名文を読め 2 好きな文章を書き写せ 3 毎日書け である。しかし、この教え通り書いたら 「文章は正しく退屈なものになる」。 「『正しいこと』と『おもしろいこと』は両立しない」 面白い文章を書くには「文章読本」の教えを破ってみる必要がありそうだ。 文庫化にあたりネット時代の作法を新たに書き下ろした。 1 魅力的な見出しを付けよ 2 改行(1行あきを含む)を多くせよ 3 長いテキストは小見出しをつけて分割せよ 4 漢字を減らせ 5 ここぞという箇所は(文字のサイズや色、罫線などで)目立たせよ そうか、目立たせるのか。