塵よりよみがえり

レイ・ブラッドベリの小説を集中的に読んだのは中学、高校のころでした。ブラッドベリを読む時期としてはおそらく理想的な年代だったでしょう。ブラッドベリの小説が輝いて見えたのもその時期でした。
その後、まだ未読の本があるというのに次第にブラッドベリの小説から遠のいて、最後に読んだのが「死ぬときはひとりぼっち」でした。個人的にはこれがブラッドベリの最後の輝きだと思っています。
そして今回、「塵よりよみがえり」が文庫化されたので手に取ってみることにしました。
過去に発表された『一族もの』の短編を集めて長編化したこの話、とても80を過ぎた人間が書いたものとは思えないのではありますが、昔からブラッドベリはこのような話を書き続けてきたわけで、それを考えると、今回もいつもと変わらないブラッドベリであって特別不思議なことではない気もします。
しかし、どうにも輝いていません。色あせているというか、萎びてしまっているというか、ああ、あの当時輝いていた頃のブラッドベリはこんなものじゃなかった、もっと凄かったよ。
あまりにも気になったので『10月はたそがれの国』の「集会」と「アンクル・エナー」を読み返してみたらやっぱり納得。翻訳者が違うので訳し方の違いはあるのだろうけれども、内容そのものも改変されています、やっぱり短編版の方が良い。ブラッドベリはこの『一族もの』のために長編という大きな器を用意したけれども、もっともっと大きな器が必要だったんだ。無理して長編にする必要なんてなかったのに…