『Before mercy snow』
あるいは、都筑道夫ふうになぞらえるならば
『殊能将之のできるまで』
気がつけば殊能将之の文章が載った本を見つけるたびに手に入れている。
最初は追悼・田波正特集を行った全日本中高年SFターミナルの『SFファンジン57号』、続いて「ハサミ男の秘密の日記」が収録された『メフィスト 2013 VOL.3』、そして今回はこの『Before mercy snow 田波正 原稿集』だ。
通販されると知ってそくざに郵便定額小為替を買い、郵便定額小為替なんて生まれて初めて買ったのでいろいろと勉強になったのだけれども、注文したのが先月の上旬。それから二週間ぐらいで届くだろうと思っていたのだが、再販にあたって初版時の誤字の訂正が行われた模様で注文してから一ヶ月ほど経ってから届いた。正誤表だけでも十分だったと思うけれども、この配慮はありがたい。
この本は、大学在学中から就職して暫くの間までの数年間の原稿をまとめた一冊でその文章はジャンル別に分かれて収録されているのだが、個人的には年代順になっていたほうがよかった気もする。ただ、年代順に収録されたからといって氏の思考の遍歴の変化というのが見えるのかというと、そこまで自分が読み取れるのかといえば怪しいところだし、やはりジャンル別のほうが正しいのかもしれないと思う。
殊能将之として作家になった後での自身のサイトにおいては、SF方面の話題と比べるとミステリに関する話の方が比較的多かったので、アヴラム・デイヴィッドスンのファンサイトという別サイトはあったものの、この本に収められたSF関係の評論、特にハードSF論を読むとSF作家としての殊能将之も見てみたかったという気持ちが湧いてくる。あるいはSF評論家としての殊能将之を。
また、横田順彌に対する評価の文章を読んで、殊能将之がSFに対する造詣がこれだけ深いのにSF小説としての実作がなかったのは、横田順彌と同じような思いだったのかもしれないとふと思った。まあ実際は違うのかもしれないけれども。
ちなみに49ページの「猿の惑星」は「砂の惑星」の誤りではないかと思う。スティングが出たのは『砂の惑星』のほうだからだ。
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