『丑三つ時から夜明けまで』大倉崇裕

  • 著: 大倉 崇裕
  • 販売元/出版社: 光文社
  • 発売日: 2013/11/8

Amazon


ミステリと幽霊というのはわりあいと相性が良く、殺された人物が幽霊となって犯人を探す話とか結構多い。
そもそも、幽霊だけではなく、猫が探偵だったり人以外の存在が探偵を務めるミステリがあるわけで、ようするに、非常識的な物事であってもその事柄が成立する枠組みがしっかりとしていてその枠組の中で物事が起こるのであればミステリとして成立するのだ。
大倉崇裕の『丑三つ時から夜明けまで』もその系統のミステリであるのだが、ここでの幽霊の役割は探偵ではなく犯人というところがユニークな点だ。
幽霊が犯人というのは自由度が高過ぎる設定で、幽霊が犯人であればどんな不可能犯罪でもできて不思議ではないと思わせてしまう部分があるのが欠点なのだが、ここでは幽霊に対する制約が科せられていて自由度を減らしている。さらには必ずしも幽霊が犯人とは限らないという、物語の構成上においての工夫があって、もちろんどの話も幽霊が関係してくるのだけれども、ワンパターンにならない展開が面白い。
欠点は、続編が出そうもない点と、幽霊犯罪専門に作られた捜査五課の面々があまり活躍していないという点だ。もっとも、捜査五課の面々に活躍の場を与えようとすると短編には収まらない分量になってしまうだろうからしかたのないことかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました