『9の扉』北村薫他

  • 著: 北村 薫他
  • 販売元/出版社: 角川書店
  • 発売日: 2013/11/22

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リレー小説というと海外だと『漂う提督』、国内だと『吹雪の山荘―赤い死の影の下に』とか『堕天使殺人事件』。どれもミステリ。SFだと思いつくのが『太陽が消えちゃう』というのがあって、といいながらもここに上げた本はどれも読んでいないのが難点なんだけれども、複数の作家が順番に書きつないで長編小説に仕立てるというのが僕の中でのリレー小説だった。
この本もリレー小説で、殊能将之の「キラキラコウモリ」が読みたくて買ったのだけれども殊能将之以外の作家の話も面白く、思いの他の掘り出し物だった。
というのもこの本の企画を立てたのが北村薫で、リレー小説ではあるけれどもリレーの仕方が異なっている。
次の人への渡すバトンが一つの言葉だけで、受け取った次の人はその言葉を作中でなんらかの形で使えばいいだけなのだ。
前の人が書いた物語の設定を使ってその物語を発展させる必要は無い。それじゃあリレー小説じゃなくって単なる描きおろしアンソロジーじゃないかと思うかもしれないし、その通りでもあるけれども、そこはミステリ作家だけあって、前の物語の設定を一部利用したり、あるいは前の物語の後日談に仕上げてしまったりと、もちろん前の話の設定は使わずに引き継いだ言葉だけで物語を作ってしまう作家もいるのだけれども、そのあたりがリレー小説というお遊びの楽しさも含んだ面白い本になっているのだ。
で、そうなると、一番手の書き手は前の物語が無いので単独で物語を作らなければいけないし、トリに回った作家は自分の書いた物語から次の人がどんな展開をするのかという楽しみを味わうことができない。最初と最後の作家だけは楽しみ方が少ないからかわいそうだなあと思っていたら、最後の辻村深月がうまいことやってくれた。そうか、こういう風にすれば最初と最後がつながるんだなあ、と、よくよく考えてみれば当たり前のことなんだけれども、リレー小説であるこの本をうまい場所に着地させてくれた。
そして、文庫本の表紙はどうやら殊能将之に対する追悼の意味合いがあるらしい。

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