恩田 陸
「皮肉なものだね。どこに何があるか分からない昔の方が、我々は幸せだったと思わないか?今はどこに何があるか分かっているのに、そのことがますます我々を不安にさせ、心配事を増やしている」
予兆の部分を描かせたら抜群にうまい恩田陸の傑作「光の帝国」の続編です。というよりも、「常野物語シリーズ」の二作目と言った方が正しいのでしょう。今回は「大きな引出し」に登場した春田家の先祖の話。
最終章までの部分は実に心地よく、素晴らしいです。といっても最終章は駄目なのかというとそうではなく、最後の最後にさらに風呂敷を広げて終わらせてしまっているので、個人的に終わり方が気に入らないというだけです。
相変わらず、やっかいな話のたたみかたをする人です。
上記の問いかけに、春田家の一族は、こう答えます。
「ひとは自分が持っていないもののことは心配しないさ、自分が手にしたものを失うことと、よそのひとが自分より先に手に入れるんじゃないかと思うものに対して心配するんだ、今の世界を見ればそれは明らかだろう」
物理的な「物」だけではなく、「知識」もまた、当てはまるのではないかと思います。必要以上に「知る」ということは不安や心配事を増やす原因ともなり得ます。
「オセロゲーム」の続編「エンドゲーム」も連載が完結したようなので一冊にまとまるのが楽しみです。
常野の一族は「しまう」とか「遠目」とかの能力を持っているのだけれど、恩田陸には是非とも物語を「たたむ」能力を身につけてもらいたいと思ってしまうのは私だけだろうか。
コメント
いいですね。トラバさせていただきます。
プロフの絵も可愛い。
常野物語
徒然に、ご訪問頂いたかたのあしあとめぐりさせていただいてます。適当に琴線にふれたものをチョイス。「皮肉なものだね。どこに何があるか分からない昔の方が、我々は幸せだったと思
恩田陸「蒲公英草紙」
恩田陸著 「蒲公英草紙」を読む。
このフレーズにシビれた。
いつの世も、新しいものは船の漕ぎだす海原に似ているように思います。
[巷の評判]読書のあしあと では,
「読んでみて、前作同様、優しく切ないテイストで綴られるおとぎ話に仕上がっていて、満足、満足。」
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