山本 やよい / Rice Craig
クレイグ・ライスのミステリが読める人生は楽しい。
小泉喜美子のエッセイか解説で見た記憶がありますが、「ミステリは大人の童話」と言う言葉があります。
当時の僕のミステリ史観といえば、密室殺人であり、前例のないトリックであり、名探偵の名推理であり…いわゆる本格ミステリ以外はミステリではないというものでした。
そんな僕に「ミステリは大人の童話」というにふさわしい、洒落たミステリというものを教えてくれたのがクレイグ・ライスです。
ライスのミステリはユーモアミステリに分類されますが、ライスのユーモアはペーソスに裏打ちされたユーモア。面白いけれどどこか悲しい。
今作ではホームグラウンドのシカゴを離れ、ウィスコンシン州の田舎町にやってきたジェークとヘレンの二人が殺人事件に巻き込まれ、マローンが二人を助けるためにウィスコンシン州まで駆けつけます。
マローンは二人を助けてとっととシカゴへ帰りたいのだけれど、おっちょこちょいな熱血漢のジェークはトラブルめがけて一直線に突き進んでいってしまう。そして第二、第三の殺人が…
全てが解決し、懐かしきシカゴへと帰る道のり、最後から十数行のシカゴへ近づいてゆく描写が胸を打ちます。
クレイグ・ライスのミステリを面白いと感じる人生は素晴らしい。
小泉喜美子のエッセイか解説で見た記憶がありますが、「ミステリは大人の童話」と言う言葉があります。
当時の僕のミステリ史観といえば、密室殺人であり、前例のないトリックであり、名探偵の名推理であり…いわゆる本格ミステリ以外はミステリではないというものでした。
そんな僕に「ミステリは大人の童話」というにふさわしい、洒落たミステリというものを教えてくれたのがクレイグ・ライスです。
ライスのミステリはユーモアミステリに分類されますが、ライスのユーモアはペーソスに裏打ちされたユーモア。面白いけれどどこか悲しい。
今作ではホームグラウンドのシカゴを離れ、ウィスコンシン州の田舎町にやってきたジェークとヘレンの二人が殺人事件に巻き込まれ、マローンが二人を助けるためにウィスコンシン州まで駆けつけます。
マローンは二人を助けてとっととシカゴへ帰りたいのだけれど、おっちょこちょいな熱血漢のジェークはトラブルめがけて一直線に突き進んでいってしまう。そして第二、第三の殺人が…
全てが解決し、懐かしきシカゴへと帰る道のり、最後から十数行のシカゴへ近づいてゆく描写が胸を打ちます。
クレイグ・ライスのミステリを面白いと感じる人生は素晴らしい。
コメント
暴徒裁判/クレイグ・ライス
(ハヤカワ文庫)
これまでも数々の事件に巻き込まれてきたジェーク&ヘレンのジャスタス夫妻。今度はこともあろうに、避暑地で起きたもと上院議員殺人事件の容疑者になってしまった!もと議員の命を奪った凶弾がどこから飛んできたのかさえわからない奇怪な事件に、酔いどれ弁護士J・J・マローンが重い腰をあげる。そんな彼をあざ笑うかのように第二、第三の事件が!見えざる殺人鬼に爆笑トリオが挑むユーモア・ミステリ。
1940年代に活躍したアメリカの女流ミステリ作家、クレイグ・ライスの第5長編が新訳でお目見えです。弁護士のマローン、その親友で熱血漢のジェークとセレブなスピード狂ヘレンの夫婦が活躍します。
ライスはハイテンションなユーモア・ミステリを得意にしており、奇怪な謎とスピード違反、アルコールの過剰摂取、そして畳み掛けるような謎解きで読者を飽きさせない抜群のエンターテイナーです。しかし彼女の作品を読むものは、いつしかユーモアの影に隠されたペーソスに気づきます。
僕は小説の価値はその作品のみで語られるべきだと思うし、作者の生い立ちがうんぬんというような表層的な分析は好きではありません。但し、ライスに関してだけは、彼女の生涯について触れることも必要かもしれません。
彼女は幼い頃から両親の元を離れて暮らし、成人してからも結婚と離婚を繰りかえした挙句にアルコール依存により体を壊し、40代の若さで亡くなりました。そんな彼女がユーモアや友情や家族愛があふれる小説を書き続けたことを考えると、作品に流れる哀感というものがより強く感じられるような気がするのです。
前置きはこれぐらいにしまして、本作の冒頭では休暇旅行に出かけたジャスタス夫妻が、いきなり旅先で事件に巻き込まれます。自分たちにかかった疑いを晴らすために親友の弁護士マローンを呼び出したジェークたちですが、絞殺・爆弾事件と更なる殺人事件が起き、自分たちで殺人者を処罰すると息巻く村人たちに狙われ、窮地に追い込まれてしまいます。マローンは彼自身と親友たちをピンチから救い出すことができるのでしょうか…というストーリー。
ぶっちゃけてしまうと、ライスの謎解きはあまり期待できません。基本的に謎を考えてから後付で解決を考える人なので、読んでみて無理があるなあと思うことも少なくありません。もちろんこのやり方がズバリと決まって傑作になった作品もありますが、本作は残念ながら、あまりうまくいかなかった部類に入ってしまうかと。まず冒頭の射殺事件の謎は「えっ、そんなことでいいのかよ?」と拍子抜けするものだったし、一番おかしいと思うのが爆破事件の真相ですね。書類を破棄したいがためにその書類に爆弾を仕掛けるというのはいくらなんでも無理がありすぎのような…。
あと突っ込んでおきたいところがもう一つ。表紙に犬が書いてあって、帯にも「マローンと探偵犬の活躍」なんて書いてありますが、その探偵犬が登場するのはラスト40ページくらいになってからだし、そもそもあまり活躍してないです…。まあこれは揚げ足取りですが(笑)。
でも、細かいところには目をつぶれば、やっぱりライスの小説は面白いです。主人公トリオを含めて登場人物たちは皆個性的ではっちゃけ過ぎた行動をとりがちなんですが、それでもなおどこかに寂しさを漂わせており、応援してやりたくなるような人間的魅力があります。ジェイクなんか美人で金持ちな嫁さんもらって、賭けで勝ってクラブを手に入れて、幸せの固まりみたいな奴なんですがね。それでも、なんだか自分の幸せが信じられないみたいな心細さを感じさせたりする描写があったりして、鼻持ちならない奴になりそうでならない絶妙のバランスがあります。この感覚はライスの計算ではなく、滲み出してくるものなのでしょう。
日本の現代作家さんでは若竹七海さんあたりのテイストが近いかも。楽しいのに切ない。大切だから失うのが怖い。そんな感覚に弱い方なら、ライスの小説は絶対にオススメですよ。
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アルファ・ラルファ大通りの脇道さま
あみぃの海外ミステリ入門さま
奥が深いドタバタミステリ「暴徒裁判」
著者: クレイグ・ライス, 山本 やよい
タイトル: 暴徒裁判 (クラシック・セレクション)
1940年代のミステリなんだけど、新訳で違和感がなく、すごいなぁと思ったら、私の大好きな翻訳者、山本やよいさんの訳でした。
どうりで、スムーズだわ。
大金持ちで美女のヘレンとその夫ジェークが巻き込まれる事件を解決する敏腕弁護士マローン。
ドタバタコメディのようだけど、ちゃんとマローンは推理します。
今回はマローンにはヘラクレスと言う犬の相棒が出来て、相思相愛状態です。
孤独感が少しでも癒えてくれるといいんだけどね、なんて、うっすら禿げつつある小男に、何故か感情移入してしまいます。