もう少しとっておこうかと思っていたのだが、『三秒間の死角』が思いの外面白かったので、ついつい手を出してしまった。
というわけで、アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレムによるデビュー作『制裁』だ。
スウェーデンという国では死刑制度が無い。
したがって、どんな犯罪を犯しても最も重い刑は無期懲役で、模範囚となれば実質的には二十年ほどで出所して社会復帰することとなる。
今回の物語『制裁』で描かれる犯罪は、幼女暴行殺人である。
そしてこの犯人は改心することなどなく何度も同じ犯行を繰り返す。
犯人によって娘を殺された父親は、逃亡中の犯人を探しだし、そして自らの手て彼を射殺する。
この物語で作者が描き出すのは、父親の行ったことをに対する正当性の問題だ。
日本でも死刑制度を廃止するという動きがある。もちろんそれにはしっかりとした論理があり死刑制度の廃止にも正当性があるのだが、いっぽうでこの小説のような事件が起こった時、おそらくは大部分の人は死刑制度の復活を願ってしまうだろう。
と同時にこの物語が真に恐ろしい物語となっているのは、被害者の父親が行ったことに対する世論の動きの部分、そしてこの父親に対する裁判の過程と検察側、つまり彼を法律にそって裁こうとする側の苦悩も描いていることだ。正義とは何かということと法治国家とは何かということについて考えさせられてしまうのは死刑を無くす代わりに私刑を許すという状況を描いているせいもある。
読み終えて意外に思ったのはグレーンス警部のエピソードが登場しないことだった。一作目から描かれていると勝手に思い込んでいた面もあったのだが、グレーンス警部の自身の悲しいエピソードは二作目から登場したものだったのか。
『制裁』アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム


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