「トリポッド 1 襲来」「トリポッド 2 脱出」「トリポッド 3 潜入」「トリポッド 4 凱歌」
最初に作者の名前を見たときに、どこかで聞いたような名前だなぁと思ったのですが、一巻のあとがきを読んで、「草の死」の作者だったということを知り、そういえばそうだったと思う反面、何故今頃になってとこの作者が翻訳されるのと思いました。しかし、ディズニーの映画化が決定したからなんだろうねぇ。
SFというジャンルの中にはいくつかサブジャンルといってもよいものがあって、その中の一つに「破滅もの」というのがあります。文字通り世界が滅亡したり、滅亡の危機に瀕したりとそういった内容の物語のことを指します。サブジャンルとして認められるということは、そういった世界が破滅してしまう物語がSF小説としてたくさん書かれたせいもあり、まぁ、たくさん書かれたからというわけではありませんが、「破滅もの」を一時期集中して読んだ時がありました。
「草の死」は題名から想像できるように破滅ものでしたが、当時はすでに手に入れることが困難な状況でしたから、未だに読んだことがありません。この機会に「草の死」も文庫化してくれるとありがたいと思ったりもします。
作者自身も破滅ものを得意としていたようですが、この「トリポッドシリーズ」も子供向けのジュブナイルSFとはいえ、一種の破滅ものでもあります。
しかし、西島大介のかわいらしい表紙の絵や、ジュブナイルSFであるということに騙されてはいけない。一巻は異星人が地球人を征服するまでの前日譚にあたるので主人公違うけれど、二巻以降の本編にあたる物語の主人公は、わがままで我慢強くなく、それが原因でトラブルを巻き起こすし、まぁ、運が良いだけが取り柄であったり、登場する人物は情け容赦なく死ぬしで、シリアスな内容。ハリーポッターのような、願望充足型のなまぬるい物語とは大きく異なっている。
なにしろ四巻の最後、異星人たちを倒し、支配から逃れ、人類滅亡の危機を脱出するのだけれど、世界は平和にならずめでたしめでたしとはならない、むしろ異星人に支配されていた時の方が平和だったりもするのであります。
あぁ、このあたりの感覚。さすが破滅ものを得意としている作者だ、と思ったのですが、当時のSF小説というか、SFを書いていた作家は子供向けの物語でも情け容赦がなかったようにも思えます。主人公も少しずつではあるが、精神的な成長のしていたりと、児童文学としてのフォーマットもしっかりと押さえていて侮れないのがこのトリポッドシリーズでした。
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