厚い文庫、薄い文庫

谺 健二の「赫い月照」を5軒目の書店で見つけてようやく買いました。内容的に重量感のある本だということは覚悟していたのですが、物理的にも重量感があることは失念していました。平台の上に置かれていたので、他の本の高さと比較しながら、まだ2、3冊は残っているなと思い手に取ったところ、下に本はなく、平台が顔をのぞかせたのです。
分厚い文庫本は京極堂シリーズがあるのでびっくりする程の厚さではなかったものの、京極堂シリーズはノベルス版で読んでいるので文庫版では読んでいません。いざ自分が読む立場になってみると、分厚い文庫というのは飾っておく分には楽しいが、読む分には迷惑であることにあらためて気づかされました。
そしたら、ふと思ったわけですよ、一番厚い文庫本はなにかって。


で、疑問に思ったので調べてみました。
ま、調べるまでもなく一番厚い文庫本は京極堂シリーズのどれかだとは予想がついていたので、系統立てて調べてみました。
記憶の範囲内では1983年1月発行された谷崎 潤一郎の「細雪」が中公文庫で936ページ。おそらくこの時点では一番厚い文庫本だったはずです。
次に京極 夏彦の「鉄鼠の檻」が2001年9月発行の講談社文庫で1359ページ。
ここで一気に記録更新です。この記録をさらに更新したのが、同じく京極 夏彦の「絡新婦の理」で講談社文庫、1389ページ。これは2002年9月発行です。
この後、2004年4月発行で大槻 文彦の「言海」がちくま学芸文庫から出たのですが惜しくも1349ページ。「言海」は小説ではなく、近代的なスタイルの国語辞典の第1号、ちくま学芸文庫は明治37年の縮刷版をそのまま覆製したもので、出版当時から読める辞書としても有名。私もこの本が出たとき買おうかどうか迷いました。結局買いませんでしたが…。それにしても「言海」いい題名です。
その他、千ページを越す文庫本としては、笠井 潔の「哲学者の密室」が2002年4月発行の創元推理文庫で、1182ページ。花村 萬月の「二進法の犬」は光文社文庫で1099ページ。これは2002年2月発行。
ページ数からいえば「絡新婦の理」が一番ですが、出版社によって紙の厚さがことなるのでひょっとしたら「言海」のほうが厚いのかもしれません。
この先これを越す文庫本が出るかどうかは判りませんが、現在、新書で最長の厚さを持つ、夢枕 獏の「荒野に獣 慟哭す」が993ページ、新書版の「絡新婦の理」が829ページであることを考えると、分冊せずに文庫化したとすれば「荒野に獣 慟哭す」の文庫版が一番厚い文庫になる可能性があります。
で、止せばいいのに薄い文庫本はなんだろうかと、ふと思ってしまったわけですよ。
全く予想もつかないので、とりあえずgoogleで検索してみました。
そうしたら、藤沢 周平の「静かな木」が2000年9月発行で新潮文庫の123ページというのを見つけました。
早速書店で現物を見てみたら確かに薄い。というか短編が三編しか収録されていません、しかも文字がでかい。反則に近いような本でした。しかし、これには理由があります。この本に収録された最後の作品は作者の遺作だったのです。三作だけで出版するしか無かったのです。
これは一発で正解を引き当てたかなと思いながら、家に帰り本棚を見回していたら、
井上 ひさしの「父と暮せば」を見つけました。同じく新潮文庫です。ページ数を調べてみると、126ページ、 2001年2月発行です。こちらも字が大きいのですが、戯曲です。ページ数でいえば「静かな木」よりも多いのですが、本というのは16ページ単位ですので、両者ともページ数が振られていないページも合わせれば128ページと同じです。さらに北野 勇作の「北野勇作どうぶつ図鑑 その1 かめ」を見つけました。これはハヤカワ文庫で106ページ。2003年4月発行です。しかもこちらはシリーズとなっていて「とんぼ」「かえる」「ねこ」「ざりがに」「いもり」と続きますが、「かえる」だけ107ページ。
ろくに調査せず、慢心していたらまずいような気がしてきました。
所有している全ての本を調べるのは不可能なので、頭を振り絞い、薄い可能性のある本を考えたところ、目の前にある「ダヤン」のジグソーパズルに目がいきました。そうだ、ダヤンのシリーズなら薄いやつがあるかもしれない。とダヤンシリーズを調べたら、ありました。池田 あきこ/佐藤 かずよの「ダヤンのミステリークッキング」。中公文庫で69ページ。2001年4月発行。厚い紙を使っているのでページ数から思うほど薄くはありませんが。
69ページ。69ページですよ。これ以上少ないページの本なんてありません。
しかし、同じ中公文庫に手のひら絵本シリーズがあることを思い出し、念のため調べました。
津田直美の「小さいとっておきの日曜日 1」。2001年6月発行で61ページ。
同じ作者の「小さい犬の日常」も2000年11月発行で61ページでした。
では、実際に薄さという点ではどうかというと、なんとまぁこれが北野 勇作の「北野勇作どうぶつ図鑑」よりも井上 ひさしの「父と暮せば」の方が薄いのです。従って、ページ数のより少ない藤沢 周平の「静かな木」が一番薄いということになりました。
と書いたところで角川mini文庫の存在を思い出しました。急いで調べてみたところ、どれも120ページ以上はあるようです。角川mini文庫は一冊も所有していないので藤沢 周平の「静かな木」より薄いのかは不明です。
厚い文庫、薄い文庫 その2
厚い文庫、薄い文庫 その3
厚い文庫、薄い文庫 その4
厚い文庫、薄い文庫 その5

コメント

  1. shiorion より:

    京極堂、1000ページ以上もあったんですね!
    厚さは気にしてもページ数はあまり気にならなかったので、改めて数字を聞かされると驚愕です。
    トリビアの「へぇー」ボタンがあったら確実に連打しています。
    ちなみに「細雪」、私は新潮文庫で購入したのですが、上下に分冊されていました・・・。
    京極堂シリーズも分冊されてきていますし、出版界の傾向としては「分冊化」なのでしょうか。
    厚さも楽しみにしている人間にとっては非常に残念な事です。

  2. lazy より:

    友人に京極堂シリーズを貸したら、800ページ読んでも全体の3分の2くらいしかないと嘆いていました。
    61ページなんていう本があるんですね・・・
    角川mini文庫は、書店で見かける限り、結構厚みはあるように思います。
    世界で一番薄い本って何なんでしょうか。気になる所です。

  3. Takeman より:

    >shiorionさん
    本をあまり読まない人にとっては、あの厚さはやはり障害の一つでしょう
    から、分冊できる場合は分冊するんじゃないでしょうか。
    しかし、分冊すると値段に跳ね返ってくるのですけどね。
    >lazyさん
    角川mini文庫は大きさが違いますので、普通の文庫本として考えるかどう
    か悩んだのですけど、文庫と名が付いているので考慮してみました。
    また、何か判ったら続きを書きます。

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