『ホック氏の異郷の冒険』加納一朗

  • 著: 加納 一朗
  • 販売元/出版社: 双葉社
  • 発売日: 1998/11

Amazon

もともとシャーロック・ホームズにはそれほど興味がなかったので、パスティーシュに関してもあえて読もうとまでは思わなかったのだが、歳をとると興味も変化するようで、若い頃には見向きもしなかったものに興味が出るようになった。
加納一朗の『ホック氏の異郷の冒険』もその一冊なのだが、そもそも加納一朗というと、今は無き朝日ソノラマ文庫のイメージが強く、だからというわけではないのだがなんとなく敬遠していた部分があって今まで読んでこなかったのだ。
で、今回たまたま読む機会があったので、読んでみた。
原典の隙間をぬってうまく話を作りこんだというのが第一印象だ。
最初から最後まであくまでサミュエル・ホッグで通していてシャーロック・ホームズであるとは書かれてはいないのだが、途中まで引っ張るかと思ったらかなり早い段階で読者も正体に気づくことができるようになっているのが少し意外でもあったが、著者にしてみればもともと彼の正体を隠すつもりなどなかったのだから当たり前といえば当たり前のことだろう。
暗号が登場するのはさておき、密室殺人まで登場するサービスっぷりは面白いのだが、密室殺人のほうは登場した瞬間に解明されてしまうのが物足りない部分の一つだ。そういった事も含めて事件そのものはひねりも少なく、意外な真相やどんでん返しというものもないのだが、伊藤博文が意外な描かれ方をしていたのが驚いた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました