「石の中の蜘蛛」読み終わりました。
ごめん、ついていけませんでした。話に。
事故の後遺症のせいで、聴覚が異常に鋭くなってしまった男が、音を頼りに失踪した女を探すってのがあらすじですが、誰かに依頼されて探そうとしているわけではなく、失踪した女が男の知り合いだったわけでもなく、いうなれば男は単なるストーカーのようなものなのです。ですから主人公に共感できるわけもなく、「勝手に探せや」って思ってしまうわけです。
一方、鋭くなった聴覚に関しては、丁寧に描写されています。嗅覚が鋭くなってしまった「オルファクトグラム」の聴覚版とでもいえそうなのですが、あちらは臭いを視覚的に表現しているのに対し、こちらは視覚的に感じる描写はあるもののあくまで音として描写しています。このあたりはもう、ねっとりって表現が合いそうなくらいに丁寧に描写されているので、ある種ディテールを読む小説ともいえます。
生活臭ならぬ生活音が部屋には染みついているからということで、男はあちらこちらをスプーンでたたいて音を聞き、失踪した女の身長や体重、声の質までも割り出すのですが、どうにもこうにも染みついた音という部分が引っかかって苦痛になり始めました。染みついた音に関しての部分、もう少しうまくいかにもあり得そうなこととして騙してくれればよかったのですが…
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