『ZOO CITY』ローレン・ビュークス

  • 訳: 和爾 桃子
  • 著: ローレン ビュークス
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 2013/6/21

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ヨハネスブルグの交通は、まるで民主主義のプロセスみたい。動きそうだ、行けそうだと思うたび渋滞にぶつかり、郊外へ出る抜け道は常にあるのだが、行ってみると、そこは違法に封鎖されている。居住区画は私設要塞ばりに警備強化されている。

期待していたような話とは違っていて、ネット上での評価も微妙なところなんだけれども、これはこれで悪くはないなあというのが読み終えた感想。
SFらしい設定というものもあまりなく、まあ犯罪を犯した人間に対して刑罰と言う形で一体の動物を共生関係のようにさせてしまい、その結果、共生関係を結ばされた人間は何らかの特殊能力を持つようになるというのが現実の世界と、この物語で描かれる世界との唯一の違いではあるものの、どのようにして共生関係にさせるかとか特殊能力が何故発生するのかといった部分に対しての科学的な説明はない。
そもそも、犯罪を犯した人間に対して、特殊能力を発生させるような事柄を刑罰として行うのが正しいのかどうかという問題もあるけれども、まあそれは置いとくことにして、ここで語られる出来事はSFというよりもハードボイルドミステリと言ってしまったほうがいい出来事であり、同じアーサー・C・クラーク賞を受賞した作品でいえばアミタヴ・ゴーシュの『カルカッタ染色体』に似たような雰囲気を持っている。つまり知らない世界を知るという点ではセンス・オブ・ワンダーに満ちた物語であり、そんなものを求めない場合はどこがSFなのだと思ってしまう。
もう少し読みやすければ評価は高かったかもしれないけれども、この読みづらさも雰囲気の一つなのかもしれない。

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