ネットを回っていると、ブログにせよtwitterにせよfacebookにせよ、目につく割合が高いのは自分が食べた食事に関する写真や文章だ。そもそも食欲ってのは人間の三大欲求の一つで、残りの欲求の場合は、例えば睡眠欲の場合はそんなものをネット上に公開しても面白くもなんともないし、性欲の場合は法律的な問題とか、個人の恥ずかしいことだったりしていろいろと問題があってこれまたネットに公開するのがはばかられるものなので、つまるところ、食欲に関する情報がネット上に氾濫するのは仕方のないことなのだと思う。
が、僕はあまり食欲に関しては無関心な部分が多く、他人が美味しいかどうかというよりも自分が美味しいかどうかでしか判断しないので、そういった食べ物の写真とか美味しいお店の情報とかを好んで見る習慣がない。
なので、漫画に登場する食事というものにもあまり気にしたことがなく、といってもグルメ系の漫画が嫌いかというとそんなこともなく、今でも『食の軍師』の新刊が出たら買って読むし、それ以外で面白そうなグルメ系の漫画が出たら読むだろうけれども、ただ、物語の中の一つの風景として描かれる食事の場面に対して気にとめることはないだろう。
この本では、グルメ系の漫画はもちろんとして、それ以外、つまり食べるということや料理をすることが主ではない漫画における食事の場面に対しても目を向け、そこから様々なものを読み取っている。
その視点は僕が漫画を読む上で全くと言っていいほど気にもとめなかった部分であり、それ故に、この本に書かれていることが新鮮であり驚きでもあった。
しかし、だからといってこの本で取り上げられていながらも未読である漫画を読んでみようと思うかというとそんなこともないところが、やはり食事に対して無関心なせいなのかもしれない。
唯一、この中で読んでみたいと思ったのは、鷺沢萌の「川べりの道」だ。吉田秋生の『河よりも長くゆるやかに』に影響を受けたという部分で、読んでみたいと思ったのだ。しかし、この作品は漫画じゃない。
でも、自分自身のこのブログで読んだ本の感想を書いているというのは、本を読むということが心の栄養とするならば、それは本質的には食事と同じことであり、僕自身も対象となるものは違えど自分が吸収したものに関してネットで公開しているという点で全く同じことをしているのだろう。
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