『超ファミコン』多根清史、阿部広樹、 箭本進一

  • 著: 多根清史、阿部広樹、 箭本進一
  • 販売元/出版社: 太田出版
  • 発売日: 2013/6/20

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なにやら今年はファミコン生誕三十周年の年らしい。
書店で見かけた時に気になっていた本なんだけれども、どうしようか迷っているうちに電子書籍化されてしかもお手頃な値段だったので、すぐさま買って読み終えた。
100本のファミコンソフトが紹介されていて、もちろん名作ソフトばかりではなく、名作ではないけれども歴史的な価値のあるソフト、そしてクソゲーが配分的にはバランスよく選択されている。
とはいうものの、千数百本ほどのソフトが発売されたファミコンであるからして、その中から100本を選んだとしても、そこから漏れてしまった名作はあるし、なによりも遊ぶ人の数だけクソゲーは存在する。
少なくとも、ここで選ばれなかった名作ソフトに関して文句をいう人よりも、選ばれなかったクソゲーに関して文句をいう人の方が多いんじゃないかと思う。しかし、「ゆるキャラ」といい「クソゲー」といい、みうらじゅんの言語感覚は凄いなあ。
絶妙のゲームバランスが特徴の一つであるドラクエシリーズの中で唯一ゲームバランスの崩れているドラクエIIが紹介されていなかったり、最大120文字近いパスワードを入力させる『破邪の封印』とか、SF系のRPGということで飛びついたら地獄を見た『星を見る人』とか、海の寝たきり老人や山のボケ老人といった、これで任天堂はよくもまあ許可を出したものだと思わせる内容の『東方見文録』といったソフトが入っていないのは好みの問題なので仕方のないことかもしれない。
そもそも、名作と呼ばれる『ドルアーガの塔』だって、あれをアーケード版で最後までクリアした人間がいたから名作と呼ばれたわけで、誰も解き明かすことができなかったらクソゲーと呼ばれてもおかしくない程の難易度だ。
まあ、あの当時のパソコン・ゲームも同じくらいの難易度だったので、今のゲームの方が生ぬるいといえばそうかもしれない。
そういったソフトの紹介も読んでいて楽しいのだが、それよりも合間にはさまれた二つのインタビュー記事と、飯野賢治に関する話のほうが貴重な内容だった。
高橋名人対毛利名人の対戦映画の内幕を語った渡辺浩弐のインタビューは高橋名人の凄さと毛利名人の純粋さをあらためて再認識させる内容だったし、テクモのソフト制作秘話もあの当時のファミコンという世界の熱意というものが感じられてよかった。が、一番心に染み入ったのは「天才クリエイター飯野賢治、そのファミコンの時代」だった。
飯野賢治という人物にどこまで迫ることができた内容なのかは判断できないけれども、飯野賢治が途中から、飯野賢治というキャラクターを演じせざるを得ない状況になり、ゲーマーからもゲーム業界からも敬遠されるようになっていったという状況、天才と言われながらも、おそらくその真価を発揮しないまま夭折してしまったことなど、飯野賢治という人物がどんな人物だったのか、もっと知りたくなる内容だった。

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