この巻に入って物語が大きく変化した。
一つは主人公が担当を外れる、という話でそれは同時に漫画家の精神的な問題が発生したというエピソードを伴ってで、なかなか赤裸々な展開だ。
しかし、僕にとってはもう一つの展開のほうが興味深く、それはこの漫画がいまでこそ、主人公が漫画雑誌の編集部に配属されたことで漫画に関するエピソードばかりになってしまっているが、当初はそうではなく、出版会社に入社してそして出版というおおきな括りの中での様々なエピソードを描いていた。僕はその部分がとてもおもしろく、楽しみにしていたのでそれがいつしか漫画というジャンルに狭まってしまったことにがっかりしたのだが、ここにきてふたたび漫画を離れて出版、それも出版社だけではなく出版業界全体に関わる問題に焦点を当ててくれたのだ。
といってもそれは現在の出版不況と地続きの問題なのでなかなか明るい希望の見える展開はしないのだが、それでも大きな変化は難しくても小さな変化はできるというささやかな希望を見せてくれる。
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