前巻でようやく訪れたつかの間の平穏もラストでひび割れてしまい、再び主人公は宿無しの生活に戻っていってしまう。
いったいどうなるのだろうかと続く三巻目を開いてみると、主人公はかろうじて親切な人に助けられる。しかしそれも一時的なものでしかなく、保護者でもない第三者はおいそれと手助けをすることなどできないという事実をこの漫画ではさりげなく描く。
この漫画を読む少し前に、とあるニュースを見た。
それは妹を保護した姉が妹が行方不明の捜索が出されていることを知り保護したことを警察に届けたところ逮捕されてしまったというニュースだ。何を言っているのかわからないニュースなのだが、未成年に対する保護者は基本的に親であり、親という保護者がいる場合は姉は保護者ではない。保護者以外の人間が行方不明扱いされている人間を匿った場合、未成年者誘拐の罪に問われるおそれがあるということなのだ。もちろん今回の事件はそこに書かれていないさまざまな事情があるのだろうけれども、第三者が未成年を助けるというのは生半可な気持ちだけではどうしようもできないということだ。
そしてそれはこの漫画にもいえることであり、主人公は再び、刑事とともに暮らすこととなるのだが、刑事は刑事でそれが誘拐という罪につながることを理解している。
主人公の学校での生活も、主人公のことを理解してくれる人たちができ、学校にも主人公の居場所ができあがる。そして主人公は刑事のことをお父さんと呼び始める。ようやく彼女にも、そして刑事にも幸せが訪れたかのように見えるのだが、それは主人公の前に本当の母親が姿を表すまでのことだった。
そう、主人公と刑事はどんなに平穏な生活を手に入れたとしても二人がそのままでいるかぎり、それは砂の楼閣でしかない。
幸せになるということはこんなにも難しいことなのだろうか。
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