『国境のエミーリャ 1』池田邦彦/津久田重吾

第二次世界大戦で日本が敗北したのはいいがその後アメリカ、イギリスとソビエトが日本を東西に分割して統治することになってしまったという設定で、その後の世界を描いた漫画。
ドイツが西と東に分割されてしまったのと同じように、日本もそうなってしまったという世界である。設定そのものは珍しいものでもなく、矢作俊彦の『あ・じゃ・ぱん』なんかは同じ設定なのだが、この漫画のユニークな点は東側にいる人々が西側へと亡命しようとしているという点と、主人公がその亡命、というか西側への逃亡を手助けしているという設定の部分だ。
彼女は普段は駅の食堂のウエイトレスとして働いているが、その一方で脱出請負人としての裏の顔も持っている。ただし彼女の場合は実務担当で逃がす相手を脱出経路まで連れていくのだ。
ということで彼女はあくまで末端の人間でしかなく、彼女たちの組織の全体というのはまだ見えていない。一方で彼女の存在を知って追いかける警察側の存在もあって、全体はこれから少しずつ明らかになっていくのだろうけれども、そのあたりの手際は実にうまい。
さらに脱出の手段もさまざまで、毎回同じルートを使っているというわけでもなく、毎回毎回そういった部分も絡めての人間ドラマが組み合わさって、飽きさせない。

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