『悪徳の輪舞曲』中山七里

悪徳弁護士<御子柴>シリーズの四作目。
悪徳弁護士といっても主人公御子柴の場合は悪徳以前に彼の経歴が凄まじすぎるので弁護士としての悪徳さは霞んでしまう。
経歴が経歴なのでこのシリーズの最高沸点は二作目になるんだろうけれども、これは二作目が最高傑作という意味ではない。主人公の設定が物語としてもっとも有効に働いたという意味だ。
そういう意味ではそれ以降の物語というのはそこからの回復の物語になるわけで、事実、三作目では彼の回復への道のりを支えた、いわば育ての親とでもいうべき人物が犯した殺人事件の弁護をするというのはそのとおりでもある。
で、そこから次はどうなるのかと思っていたら、今度は本当の親、つまり生物学的な意味での親の殺人を弁護するという話だったので、いったいどこまでエスカレートしていくのだろうなあこのシリーズは、と思ってしまった。
そもそも、母親の視点で彼女が殺人を犯す場面からこの物語は始まる。いくらなんでもそれが嘘だったというわけにもいかないわけで、じゃあ今回は有罪を無罪にする話なのか、といえば基本的にはそうだ。
しかし、それでは物語としてはあまりおもしろくはない。有罪を無罪に、殺人を犯しても無罪にしてしまうから悪徳弁護士というのは確かにそうなのだが、このシリーズはそうではない。
というわけで、登場人物たちと読み手の思惑は少しずれたところで物語は進んでいく。

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