『悪魔岬』に続いて笹沢左保のデビュー二作目『霧に溶ける』を読む。
デビュー作の『招かれざる客』はまだ未読なのでそのうち読まないといけないなと思っているが、しかしこれほどまでに笹沢左保が本格ミステリ色の強い作品を書いていたとは知らなかった。
『霧に溶ける』はミスコンテストの最終候補に残った5人の女性が次々と不幸に襲われるという展開で5人のうち三人は事故死あるいは過失死、殺人と死亡し一人は事故で入院してしまう。となると残った一人が怪しいとなるわけだが、そもそも本格ミステリとして読んでいないので、彼女が犯人で、追い詰められていくサスペンスなのかもしれないという読み方もできでしまうし、実際のところどちらなのかわからないままに読み進めていった。
本格ミステリとしてではなくサスペンスとしても読むことができるのは彼女が結婚している男性と不倫関係にあり、その男性に身も心も捧げている状態で、なにがなんでもミスコンテストに優勝ないしは準優勝してまとまったお金を手に入れる必要があるというのが物語が始まってそうそうに明らかにされるからだ。
しかし、過失死と思われたのが密室殺人の可能性もあることがわかり、事故死と思われたものにも不自然な要素があって、いわゆる不可能殺人の可能性が出てきて本格ミステリの様相が立ち上がってくる。
となると一番怪しい人物が犯人ではなく一番怪しくない人物が犯人ということにもなってくるのだが、怪しくない人物は物理的に犯行を行うことができないのである。
やがて事件の真相が意外な人物によって明らかにされていくのだが、いやはや凄まじいものがあった。殺すものと殺されるもの、登場人物に無駄がないというか、登場人物に割り当てた役割に無駄がない。ものすごい密度の真相で、恐れ入りました。
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