過去と今をうまく結びつけているなあという感じだった。
古くて懐かしさを感じるけれども同時に新しい。
それは語られる物語がそうだというわけではなくって描かれているもの、描き方それらすべてを含んだうえでの感覚だ。
心臓に欠陥があって余命宣告を受けている女子高生が主人公の表題作「心臓」はどうしてそんな描き方ができるのだろうかと感心する以前に手に負えない作品だった。
そもそも女子高生の高校生活が描かれていると同時に彼女の体を耕そうとする小さな人が登場する。その小さな人は青年で苦労して彼女の頭の上に上り、荒れ地だけれども肥沃、彼にはそう見える彼女の頭の上を耕してそこに花を植えようとする。彼はなにかのモチーフなのだろうか、しかし物語は彼女とそして彼のそれぞれのエピソードを紡いでいく。
そんなファンタジーっぽさもある作品もある一方で、親友とその親友のDV彼氏との関係を描いた「ニューハワイ」なんていう話もある。関係といってもDV彼氏の奪い合いというわけではない。あくまで主人公は親友がDV彼氏の被害に合いながらも共依存関係になっている親友のことを心配するのだ。しかしその一方で主人公はその親友のことが嫌いなのだ。しかし嫌いだけれども主人公もまたその親友と共依存的な状況にある。
大橋裕之との共作はものすごく変な話で箸休め、になるかどうかわからないけれども、この短編集のなかでは良いアクセントになっている。
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