森下裕美の存在を知ったのはヤングジャンプで連載された『荒野のペンギン』からだが、実際はその前に少年ジャンプで『JUN』という漫画が連載されていて、その当時は毎週、少年ジャンプを買っていて読んでいたので知っていたはずなのだが、森下ひろみ名義だったので結びつかなかったのだろう。
等身の低い中年のおじさんが登場するちょっと変わった漫画でわりと好きだったが、森下裕美がブレイクしたのはその後の『少年アシベ』からだった。その後は四コマ漫画にシフトしていって、ちょっと毒のある登場人物達が活躍する森下裕美の漫画はその毒の部分が好きだったのだが『大阪ハムレット』が単行本として出た当たりで、追いかけるのを止めてしまった。
『大阪ハムレット』がそれまでの作風から変化させた作品であることも知っていたが、ちょっと息切れしてしまったからだ。
とはいえどもいつかは読もうと思っていたわけで、森下裕美の走っているところから周回遅れとなってしまったが、ようやく読む気持ちが湧いてきた。
毒のあるというと語弊があるかもしれないが、大阪を舞台にいかにも大阪人といえるような人物の愛憎劇。なかなかシリアスで切なくてやりきれなくなるような物語だ。
しかし、それでも主人公たちは生きることに絶望してはおらず、死にたいとか、生きていたいとかそういったことなどは考えずに、生きていく。
なぜ、こんな生き方ができるのだろうかとも思うのだが、多分それは、生きているということをそのまま描いているからなのだろうと思う。
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