『Iの悲劇』米澤穂信

『本と鍵の季節』のほうはまだ読んでもない、というか買ってもいないのだが先にこちらのほうを読んでしまった。もっともそれぞれ別々の作品なのでどちらを先に読もうが問題はない。
タイトルからエラリー・クイーンを想像してしまうが、クイーンに関係する話ではない。多分。
どちらかといえばアガサ・クリスティのほうを彷彿させる。というのは最終的に誰もいなくなってしまうからだ。
高齢化により過疎化し、ついには誰も住む人がいなくなってしまったとある村を再生するために移住者を募り、村の再生が行われることになる。
主人公はその再生を行うために新たに作られた甦り課に赴任することとなった市役所の所員。上司は定時になればさっさと帰ってしまう人物、部下は部下で学生気分の抜けない女の子。
そして主人公といえば出世することしか頭にないのだが、甦り課に移ったのは体のいい左遷であることにショックを受けている。
物語は移住者たちの間に起こる様々なトラブルを主人公たちが解決していくという話なのだが、解決してすべてが元通りになるというわけではない。トラブルに巻き込まれたあるいはトラブルを起こしてしまった移住者たちはこの地に居住し続けることができず、ひとりふたりと去っていく。やがて最終章ではすべての真相があきらかになるのだが、そこであきらかにされた真相は苦く、たしかにそのとおりだと理屈ではそう思うのだが、だからといって理屈で生活をしていくことができるのかといえばそんなことはなく、ここで行われたことは悲劇でしかないのだ。
この真相の苦さは米澤穂信の真骨頂ともいえる。

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