webで無料公開されているのをひと目見て、おお、これはと興奮した。
それは福山庸治を彷彿させる絵柄だったからだ。
福山庸治が新作を発表しなくなって久しい。僕はいまでも福山庸治の新作を待ち望んでいるのだけれども、それもかなわない夢だ。
そんなとき、平庫ワカがいきなり登場したのだ。もちろん作者にとっては大きなお世話だとおもうのだが。
ネットを検索してみると松本次郎に似ているという意見がみつかった。言われてみるとたしかにそのとおりだ。そして松本次郎はかつて福山庸治のアシスタントをしていたことがあった。松本次郎が福山庸治の影響を受けたのかどうかはわからない。そもそも平庫ワカが松本次郎に影響を受けたのかすら定かではない。
それでも、福山庸治を彷彿させる漫画家が登場したのは望外の喜びだった。
読みたいという気持ちを落ち着かせ、webで読むことができるけれども単行本としてまとまるまで読むのを我慢し、そしてようやく一冊の本として出た。
改めてじっくりと読むとそれほど福山庸治には似ていない。松本次郎のほうに似ている。しかしそんなことはもはやどうでもいい。
物語が始まって早々、わずか3ページの間で主人公の表情は別人かのごとく変わる。キャラクターが定まっていないというわけではない。主人公は自分の感情に素直で誰かにおもねるとか世間体とかを気にする人物ではない。もっとも自分の気持に素直だからといって幸せな生活ができているわけでもなく、むしろ世間という名のヤスリでもって自分の感情をヤスリがけされている。
それでも彼女はダイナミックでタフだ。
彼女は高校時代の友人が自殺をしたことをニュースで知る。数日前に会っていたし、昨日もLINEのやり取りをしていた。友人はなにも残さず何も知らさず二人の関係も含めて断ち切った。
そこから過去の回想が挟み込まれ少しづつ亡くなった友人の姿が明らかになっていく。友人の名はマリコ。彼女は何故マイ・ブロークン・マリコだったのかは読んでもらいたい。
年明けて早々だが今年のベストはこれで決まりだ。と言い切ってしまいたくなる。
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