『終焉』ハラルト・ギルバース

『ゲルマニア』からはじまった第二次世界大戦敗戦間近のベルリンを舞台とした物語もこの三作目でとうとうドイツの無条件降伏を迎える。
前作、前々作は敗戦の色濃い状況とはいえど、舞台はベルリンでナチスのお膝元である。主人公は奥さんが純粋なアーリア人ということでかろうじて収容所送りにはされていないけれども、ユダヤ人であるがために、常に身の危険にさらされている状況だった。そんな中で事件の捜査に乗り出さなければいけないという状況設定が面白かったけれども、今回はもう無条件降伏間際である。といってもそれを知っているのは読者側であって主人公たちはいつ戦争が終わるのかは知らないが、それでもドイツは数日以内に降伏するだろうという予感はしている。
では、主人公たちはそこから平和な暮らしに戻ることができるのかといえばそう簡単にはいかなくって、ベルリンに攻め入ってくるのはイギリス・アメリカ軍ではなくソビエト軍である。
ということでナチスに怯える日からこんどはソビエト軍に怯える日に変わるだけというところが、いたたまれない。
しかし、そうはいってもドイツは無条件降伏をし、ソビエト軍の統治下において少しづつ復興の兆しをみせはじめていって、このあたりの描写は知らなかっただけに興味深く読むことができる。そんなわけで、もはやミステリとしての体裁もなくなってきている部分もあるが、三作目ともなると主人公を含めレギュラー人物達の活躍などが面白く、違う意味での面白さが出てくる。
三部作で終わるかと思ったら四作目が出版予定で、さらにその後の話も構想中らしい。当初の面白さはなくなってきたが、戦後の混乱時期のドイツを舞台とするミステリとして楽しみである。翻訳されるといいなあ。

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