『スペクトラルウィザード』の続編が出た。
前作は基本的に一話完結の話だったので、まあ続きが描かれたとしても不思議ではなかったけれども、タイトルにナンバリングがされていなかったし、お話としてはまとまっていたのでこの物語はこれで終わりだと思っていた。
で、続編は長編だ。
魔術師たちがそれぞれ自分の知識欲に任せるままに最強の魔法を研究しつづけ、彼らは彼らで魔術師ギルドを作って一つにまとまっていたけれども、それはあくまで対外的で、魔術師同士の交流が盛んだったわけでもなく、そんなわけだから彼らは地球を滅ぼしてしまうような魔導書を次々と開発しつづけ、それに驚異を覚えた人類は科学を中心とする騎士団を作り、魔術師との戦争を始める。この戦争は騎士団の勝利に終わり、魔術師ギルドは解体し、生き延びた魔術師たちは指名手配犯として扱われ逃亡生活を強いられていた。
というのが基本設定で、物語はこの逃亡生活を強いられる魔術師たちの視点で語られる。魔術師たちにとってはすべてが終わったあとの物語でもあり、魔術師の視点で見ればこの世界は世界が滅んだあとの世界でもある。もちろん世界は滅んではいないが、魔術師としての活動ができるわけでもなく、かといって魔法が使えるからといって騎士団を倒して世界をひっくり返すことができるわけでもない。だから生きる目的もなく虚無的だ。
で、今回は数ある魔導書のなかで最強の魔導書をめぐる物語で、魔術師たちと騎士団たちが協力し合ったり反目しあったり、すべてが終わってしまった世界で静かに美しく物語が進んでいく。
物語としては完結しているのだが、読者的にはそれでいいのかという結末でもあるし、描き下ろしのエピソードも含めてまだまだ続きがありそうな感じでもある。
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