思春期の男女の精神が入れ替わってしまうという物語はそれほど珍しくはない。
古くは山中恒の『おれがあいつであいつがおれで』、新しいところだと新海誠の『君の名は』なんかがある。とはいってもこのテーマの物語を僕はそれほど読んでいないので、ほかにももっと触れたほうがいい作品はあるだろう。
『ヒナちゃんチェンジ』も男女の精神が入れ替わってしまう物語なんだけれども、過去の作品と比べて違っているのは入れ替わりが当人同士で任意に行うことができるという点だ。
主人公のヒナとレンは幼馴染。小さい頃に小指と小指をつなげることによってお互いの心を入れ替えることができる魔法を手に入れた。
お互いが了解すればいつでも好きなときに好きな時間だけ体を入れ替えることができるのだ。
心を入れ替えることでなにか素晴らしいことができるかといえばそんなこともなく、成長するにつれて疎遠になっていく。そりゃそうだろうね、心を入れ替えることができたとしてもそれでなにか得することがあるかといえばちょっと思いつかない。
じゃあこの物語の主人公たちは任意に体を入れ替えて何をするのかというと、気になる人はまず読んでもらいたい。
そもそも、体を入れ替えるという魔法以前に主人公たちは傷ついていて、その痛みから逃れるために体を入れ替える。しかし入れ替えたところで痛みがなくなるわけではなく、ただその場しのぎにすぎない。けれども入れ替えずにはいられない。
そして入れ替えるたびに疎遠になっていた二人の心にも変化が訪れて、ああ、この物語はどこにたどり着くのだろうか。
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