買ったまま積読になってしまい気がついたら5年も経っていた。
いいかげんに読んでおかなければと引っ張り出してきて読む。
巻頭の「二つの顔」からして連城三紀彦らしさあふれる強烈な謎で、ホテルで殺された人物が自分の妻らしいとのことで身元確認をしてほしいと警察からの電話を受けたところから始まるのだが、主人公はそこで悩む。というのもついさっきまで自分は庭を掘っていて、なぜ掘っていたのかというと自分の家で自分の妻を殺してしまったからで、庭には自分が殺した妻の遺体がうまっているはずである。ではホテルで死んているのは誰なのか、いや、ホテルで死んでいるのが本当の妻で、自分が殺したのは誰なのか。
同じ人物が七回殺される『どこまでも殺されて』を書いた作者だけあって、提示される謎は不可思議だ。
続く「過去からの声」は誘拐物でこれもなかなかトリッキーな話で誘拐物にこんな手があったのかと感心してしまう。
表題作の「夜よ鼠たちのために」は評価が高い作品で、読んでみるとたしかに凝っているのだが、動機となる部分が陰惨すぎて犯人に同情したくなる気持ちもある反面、犯人の考え方についていくことができない部分もあって後味がちょっと悪い。
全体的に読み手のミスリードを誘う部分が肝となっている話が多いのでまとめて読むと似てはないのに似たようなパターンという感じがしてしまうのが難点かもしれない。
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