『第七女子会彷徨』

最初に読んだのが『見かけの二重星』で、シリアスにならずにユーモアを交えた話だったので、作者の持ち味というのはこういう雰囲気の物語なのだと思ってしまった。
で、続いて『バベルの図書館』を読んだら途中からいきなりダークな展開になって、こういう話も書くのだと思ったら『ホブゴブリン 魔女とふたり』もダークな話で代表作である『第七女子会彷徨』はその時点まで未読だったので、こちらも読まないといけないなと思って1巻だけ買って読んだらこちらも意外とダークな話だったわけで、ここにきてようやく、最初に読んだ『見かけの二重星』が例外的で、基本はダークな話の人なのだと理解した。
というわけで『第七女子会彷徨』はその時点で全10巻。短編集とはいえども連作短編で10巻にて物語は完結するのだが、残り9冊も読まないといけないと思うと躊躇してしまうのが歳を取った証拠かもしれない。これが5巻くらいならは一気に読むということもできるが10巻となると腰が重くなるのだ。というわけで少しずつ読むことにしたのだが、ようやく読み終えることができた。
物語は基本的に、高木さんと金やんの二人の女子高生の物語。
高木さんがボケ担当で金やんはつっこみ担当といったところだが、この二人が友だちになったのは、友だち制度のおかげで、主人公たちの世界では高校生になると、生徒の入学時のアンケートから判断して理想的な友だちというのが同級生の中から選ばれ、必ず友だちができるという世界だ。それが学生生活の中で友だちができないまま孤独に学生生活を送ってしまう生徒の救済処置かどうかはわからない。
その他にも不思議な設定は満載で、死んだ人間の思考をデジタル化できる世界でもあるので、デジタル化された思考は天国と呼ばれるコンピュータ空間の中で演算処理され、死後も生きることができる。さらには現実の世界への投影も超空間プロジェクターによって可能で意思の疎通もできる。物理的な接触こそはできないのでそれは一見すると幽霊と同じでもある。
理想の友だちが選ばれ、死後ですら希望すれば天国で生きることができる世界。
人の心ですら演算することが可能な世界で果たして主人公たちは自由意志でもって生きているのか、あるいは彼女たちの世界ですら、すでに演算されているのかもしれないという可能性をはらんだまま、最終巻ではそんな与えられた世界の中で自分の意志で人生を選択するという結末を見せてくれる。

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