野田サトルの『ゴールデンカムイ』の元ネタになったものということで興味はあったが、電子書籍で4巻と巻数が少ないものの1巻で完結していたのならばともかく、元ネタになっているというだけで、他に積読の本があるという状況で4巻まで読むの躊躇しまっていた。しかし電子書籍で1巻が安くなっていたので買って読んでみた。
まず主人公の造形が面白い。右手が包帯で巻かれていて、なおかつのそ右手はつねに懐に入れられている。手首から先がないのだろう、今回の主人公はちょっと変わっているなと思っていたら右手の秘密はすぐに明らかにされる。主人公が右手を使わざるを得ないとき、人が死ぬのだ。
これが何らかの呪いなのか、それとも主人公自身の心情の問題なのかは明らかにされないのだが、人物像系がうまいなあと思う。
で、この主人公はとある人物を敵として探し求めている。その過程で間違った人間を殺してしまい犯罪者としても追われる身だ。
一方で『ゴールデンカムイ』の元ネタと言われるくらいなのだから埋蔵金の話が出てくるし、そのありかを記した方法はとある人物の背中に彫られた刺青、といった部分も共通している。ただし『ゴールデンカムイ』の刺青は複数の人間に彫られているが『シュマリ』ではたった一人。なので1巻の最初の方でシュマリは埋蔵金を見つけてしまう。さらにいえばシュマリが追い求めていた敵もそれに前後して見つけてしまい、洪水で死んでしまう。
冒頭で提示された物語を駆動する設定は1巻の半分もいかないうちに解決してしまうのだ。
じゃあそれ以降はもう面白くないのかというと、とんでもない。1巻を読み終えてすぐさま残りの3冊を買ってしまうほど続きが気になる。
それはシュマリという人物の面白さであり、物語がどこに向かっていくのかわからないという部分だろう。
手塚治虫自身は本来描きたかったことを描くことができなくってこの物語に不満があったということなのだが、いやいや、作者が不満に思っていても読む方にとっては面白い。
ああ、まだまだ読んでいない手塚治虫の作品はたくさんある。少しづつ読んでいこう。
コメント