『喧嘩』黒川博行

<疫病神>シリーズの6作目。
安定した面白さだった。
今回はなにしろ疫病神である桑原が前作の最後でそれまで所属していた二蝶会を破門され、さてどうなるという状況である。
お話の面白さはさておき、後ろ盾がなくなった桑原自身はパワーダウンせざるを得ないのではないかと思っていたが、読んでみるとそんなことはなかった。
破門され極道ではなく堅気となった身の上でありながらも喧嘩を売られれば買う。それは相手が極道であってもだ。
というのも今回もまた二宮が桑原にサバキの依頼をしてしまったからで、二宮は桑原を忌み嫌っていながらも結局は桑原を頼りにするしかないという部分が腐れ縁でもある。
今回のサバキは議員からの依頼ということで地方議員の内幕というものが描かれる。もちろんここで描かれていることが真実というわけでもないのだが、かといってデタラメであるともいいきれない。多かれ少なかれ、どんな立場にいる人間であっても悪いことをする人間はいるわけで、そういう悪いことをする人間が議員、あるいは議員の秘書という立場にあった場合、人間ここまで腐るということはあり得ることでそう考えると、いろいろと辛くなる。
そんな腐った世の中を二宮と桑原は天誅というわけではないが、自分たちの私利私欲を中心にしながらもすこしだけ叩きのめしてくれて、悪をもって悪を制するという感じになるけれども、読後感は悪くない。

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