『ミッドナイトブルー』須藤佑実

表紙の絵に惹かれて読んでみた。
といっても買う前にネットで検索して表紙の絵と実際の中身の絵に違いがあるかどうかは調べてみたのだが。
極稀に表紙の絵と中身が違う場合もあって、活字の本ならばともかく漫画の場合は違うとがっかりしてしまう。
どの話も男女の恋愛にからんだ話で、かといってドロドロとした展開になることもなく絵柄の雰囲気も合わせて爽やかだ。
こういう話はたまに読みたくなる。
冒頭の話は高校教師と彼の元教え子の話だ。合コンをした翌日、目が覚めると一人の女性がいた。記憶にないのだが、合コンでお持ち帰りをしてしまったようだ。といいたいところだが実際はなにもない。彼女は酔いつぶれてしまった彼を彼のアパートまで連れていき、そこで終電がなくなってしまったので一夜を明かしただけだった。
そしてその彼女は彼の元教え子だった。
そしてそこからの展開が実にいいのだ。
そんな爽やかな物語があるかとおもえば「ある夫婦の記録」のように、いびつな、そして奇妙な愛の話もある。奥さんのことを愛しているけれども、自分自身に自信を持つことができなくて、それゆえに奥さんに触れることもできない旦那。業を煮やした妻は自分に触れてほしくて夫に襲いかかろうとする。が、それにショックを受けた夫は家を飛び出してしまう。
家のいたるところに監視カメラを設置して……。
妻に触れることのできない夫はそのカメラごしに妻を見ることで安堵を得る。しかし妻の方はそういう訳にはいかない。夫に嫉妬をしてほしくて男を連れ込んで寝たりする。それでも夫は彼女のことを許し、妻が連れ込んだ男との情事をみることでそれを自分自身に投影して満足をする。
どう考えても異常な世界だ。妻の方も呆れ果てる一方で、離婚したいとは思っていない。他の男に体を許してもだ。
いや、これはすごい話だなあと思っていると最後の作品になる。タイトルにもなっている「ミッドナイトブルー」
高校の天文部の四人。男二人に女二人。主人公の男の子は同じ天文部の女の子に好意をもっているけれども告白することができないでいる。彼女の方も彼に好意を持っていそうな感じなんだけれどもそれも自信がない。火星の大接近を見た夜、彼女は、この大接近が二年ごと、ということから二年ごとに四人で集まろうと提案する。しかしその翌日、彼女は事故で死んでしまう。
そして二年後。
三人は約束通り集まるのだが、そこに死んだはずの彼女が幽霊となって現れる。しかしその姿を見ることができるのは彼だけ。二年ごとの同窓会の度に彼女は現れる。彼女の姿は高校生のままだが他の三人は少しずつ歳をとっていく。
彼女はどうして成仏せずにいるのか、そして三人が合わないでいるとき、彼女はどうしているのか。
気がつくと僕はこの本に惚れ込んでしまっていた。

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