「じゃあね」と言って母親が家を出ていく場面から物語ははじまる。
残されたのは父と小学生の娘。
父と母は離婚したのだ。
過剰な書き込みのないシンプルな線で描かれた『コスモス』の世界は、そのシンプルさと比例する形で父と二人で生活しなければいけなくなった娘の心情を描いていく。
母親が出ていってそして二度とこの家に戻ってくることはないという状況で、あらかじめどのような形で離婚するということが告げられたのかはわからないが、猛烈な悲しみにおそわれるわけでもなく、かといって家のなかからそれまで存在していた一人の人間の消失による空虚な空間からは逃れようもなく、娘は母親がいた時間からいなくなった時間を一つの連続する線として受け入れていく。
母親が出ていく前に作っておいたカレーライスの存在とか、なにげない物が読み手に悲しみを投げかけてくる一方で、物語の主人公である娘は一人の人間がいなくなったことでいろいろなことを知りそして学んでいく。
そして一連の物語の最後でタイトルの『コスモス』を見つける。
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