久しぶりの舞城王太郎。
今回はホラーということでジャンル的には自分の好みではないけれどもそこは舞城王太郎だし、過去の作品だってホラー寄りのものもあったし、ということで読む。
三つの短編からなる物語だがそれぞれが共通しているというわけではない。まあ舞城王太郎の今までの作品がそうであるように福井県の西暁町は舞台となるけれども、それにしてもこれだけ西暁町が舞台となる話がありながら西暁町がどんな町なのかはさっぱりわからない。
それはさておき、この物語がちょっと変わっているのは語り手の存在で、これが登場人物の守護霊のような存在なのだ。物語を読み終えても彼らの存在がどういう存在なのかはわからないままだし、守護霊のような存在だからといって守護している人物に何かしらの影響を与えることもできない。ただ、よりそって見守る、いやいろいろとぶつくさと文句を言ったり忠告したりするけれども、そういった声は相手にはまったく聞こえないので言い換えればテレビの登場人物を見ている視聴者という立場に近いかもしれない。
ホラーということで怪異は存在する。確かに怖いし舞城王太郎の独特の世界の怪異である。登場人物は助かる場合もあれば助からない場合もある。そしてホラーだから怪異に対しての合理的な説明など行われない。しかしどんなふうに書いてもやはり舞城王太郎の小説であって、最後には読み手の中に愛が残る。
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