厭なことがあった顔だった。他人の鼻血で真っ赤になったおにぎりを喰わされたらこんな顔になるのかもしれない
底辺の人々を主人公にして、彼らのいる場所から少し上の方向へと向かっていくんじゃないのかなという淡い希望を見せながらも、彼らのいる場所はいうなれば幸せな底辺で、彼らの足元にはまだまだ下があるということをまざまざと見せつけられる話だ。
無職で路上生活者でポケットには小銭すらなくって明日どころか一分先すらどうやって生きていけばわからない状況であっても諦めない限りは僅かな幸せがある。だからその僅かな幸せは案外と強固な地盤でそんな強固な地盤があるからその下が見えない。
けれども、底辺よりもさらに下のどん底は確実に存在していて、平山夢明はそのどん底を見せつけてくる。
朝っぱらからこういう小説を読んでしまうと、その日一日どうやって凌げばいいのだろうかというげんなりとした気持ちになってしまうけれども、じゃあ夜寝る前に読めばいいのかというえばそんなわけでもない。気分が上昇気味のときに読むしかないのかな。
冒頭に引用したような比喩をはじめ「クリスマスの靴下の中に<参考書>を発見したような顔」などどうやったらこんな表現ができるのだろうという文章が満載だ。
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