今更ながら、いがらしみきおの『Sink』を読んだ。
いがらしみきおは昔から読んでいたが最近はちょっとご無沙汰気味、とくに『ぼのぼの』はあまりにも長く続きすぎるので途中で脱落してしまった。
それはさておき、いがらしみきおというとギャグ漫画の人というイメージが強かったのでこの『Sink』が出たときにはちょっと驚いたのだ。なにしろこの漫画はホラーなのだ。いがらしみきおの絵柄でホラーができるのかという余計なお世話な感情もそうだが、ホラーは苦手なので興味はあるけれども、わざわざ好き好んで苦手なものを読むこともないだろうと、読まずに素通りしてしまった。
が、しかしその後、いがらしみきおはギャグ漫画以外の方面にも進んでいき、いつのまにか僕自身もそういう、いがらしみきおの世界を受け入れていった。
で読み始めてみると、モノクロの濃淡で塗られた絵といい、どこか不自然な登場人物、この不自然というのは行動だったり、容姿だったり、そして唐突に起こる奇妙な現象と、何かが起ころうとしているあるいはすでに起こっていてそれはもはや止めようもないことであるということがじわりじわりと読み手に伝わってくる。
どこか泥臭い、あるいは昭和という時代っぽい部分があって、ホラーだから洗練されている必要もないのだが、ちょっと古臭さも感じさせる一方でその古臭さの部分でさえ不穏に満ちている。
後半になるとその不穏さは見える形で現れ始めてくるのだが、現れ始めたときにはすでに手遅れであり、あとはもう行き着くところまで連れて行かれるしかないのだ。
しかしそこで驚くのは大友克洋の『童夢』を彷彿させる展開で、カタルシスはまったくないのだが、まさかいがらしみきおがこんな話を描いたとはという驚きがあった。
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