上を向けば涙はこぼれないかもしれない。しかし、上を向くその目には、自分よりも恵まれている人たちや幸せそうな人たちが映る。その瞬間、己の不幸を呪い、より一層みじめな思いをすることになる。
バッタには興味はないけれどもネットで面白いと評判になっていたので読んでみた。
日本に住んでいるとバッタというのは単なる昆虫の一つでそれほど気になる存在でもない、といっても自然が少なくなってきている環境で、たまに見かけたりするとちょっと得した気持ちになったりもするけれども、それは日本ではバッタが大発生するということがないせいもあるだろう。
バッタが大量発生すると大きな被害が出るということはコーエーの「三國志」というゲームで知っていたけれども、それはやはりゲームの世界の出来事で、身近な感覚には結びつくことはなかった。
けれども、それは僕自身の場合であって世の中にはいろいろな人がいるもので、この本の著者の場合はバッタに並々ならぬ想いを抱く人もいて、バッタの研究者になってしまうのである。
日本でバッタを研究して生活していくことができるのだろうかと思ったりもするけれども、著者の場合はアフリカまで行ってしまう。ろくに現地の言葉もしゃべることができないと言うのにだ。この時点でもう僕には真似のできない事柄で、読んでいてただただすごいなあと思うわけだが、そこに憧れとか羨ましさとかを感じないのはやはり僕とはまったくかけ離れた世界のできごとだからかもしれない。というかバッタの研究をする、というところまではよいとして、その先にあるのが、バッタの大群に食べられてみたいという想いがあるという点だろう。はっきりいってどこかおかしい。
実際、この本の終盤、バッタの大群に遭遇するチャンスが訪れ、そして著者はこのときのために用意した緑の服を来て、バッタの大群の中に佇むのである。
果たして彼の願いはかなったのだろうか。という点に関しては気になる人はこの本を読んでもらうこととして、自分の好きなことをして生活することができるという点では幸せな人だと思うわけだが、では自分はどうかといえば、今のところ自分の好きなことを仕事として生活をすることができている。大変なこともあるけれども、それでも好きなことをして生活していくことができるということはやはり幸せなのだろう。
この本を読んで、自分の幸せを実感することができたという点ではちょっとおもしろい体験でもあった。
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