「運命の裁き」を読んだので、続けざまにその長編版『運命』を読んだ。
「運命の裁き」は小鷹信光の訳だったが、こちらは中田耕治の訳。どちらが良い、悪いということは言いたくないのだが、小鷹信光の訳のほうが新しいだけあってか読みやすく中田耕治の訳は翻訳された年代が年代だけあって古びている。
登場人物の名前も基本的には同じはずなのだが、訳者によっての違いがあって、微妙に名前が異なる。
まあ、そのあたりはさておいて、物語は短編版とほぼ同じように進んでいく。途中で少し展開が異なっているのはアーチャーが関わることになる一家の母親の扱いで、短編版では精神病院から脱走した男が4歳の時に落馬で亡くなっているのに対して長編では3年前に投身自殺しているという点だ。
短編での落馬の原因が、4歳だった男が花火に火をつけたことから馬が驚き、そして落馬したということで、それが事件の真相に大きく関わってきていたのだが、長編ではその部分がまったく改変されてしまっている。
重要な部分が短編とは異なりつつも男の兄、兄の妻と次々と何者かに殺されるという展開はまったく同じだ。しかし、終盤にかけて登場人物の行動が短編版と比べて大きく異なってくる。そしてアーチャーがたどり着く真相は、短編版とはまったく異なり、短編版と比べると遥かにやるせない終わり方をする。
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