『パンダ探偵社 1』澤江ポンプ

タイトルからしてなんだかほんわりとしてしまいそうになる。
表紙にもパンダの耳と目を持った人物が描かれている。
これはひょっとしてギャグ漫画なのだろうかと思ったのだが、読み始めてすぐにそんな思いは間違っていることを思い知らされる。
意識も身体も徐々に動植物に変身していく変身病というものが蔓延した世界。必ずしもすべての人が発病するわけでもなく、その原因も治療方法も不明。そして何に変身するのかも千差万別である。
主人公はあるときパンダに変身する形として発病してしまい、教師の職を失う。それを見かねた学生時代の先輩が彼を自分の探偵事務所で雇うことにする。だからパンダ探偵社なのだ。そしてこの探偵社は変身病に関わる案件しか引き受けない。
第一話を読んで思い浮かんだのは岡本一広の『彼女はトランスルーセント』という漫画だった。『彼女はトランスルーセント』は透明病という病気が存在する世界の物語で、この透明病は文字どおり体が徐々に透明になってしまう病気である。思春期の不安定な心の揺れ具合と透明になるという自分自身の存在が見えなくなってしまうという現象が物語として絶妙な組み合わせになっているのだが、パンダ探偵社のそれぞれの話も同じで、変身する対象と、変身していく人たちの心情がうまく重ね合わさった物語になっている。
『彼女はトランスルーセント』のほうは完全に透明になってしまっても人の心は失わないでいるのに対して、こちらは完全に変身対象である動植物に変化してしまう。だから人としての存在をやめてしまう。人でなくなることを受け入れなくてはならないのだ。

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