『猫が足りない』沢村凛

主人公は就職浪人中の青年。そして主人公がひそかにミセス不機嫌と名付けている四元さんとコンビを組んで日常の謎を解決するという連作ミステリ。というと間違ってはいないけれども中身は全然かけ離れている。
四元さんは大の猫好きでありながら家庭の事情で猫を飼うことができず、本人曰く、猫が足りないという状態。そのせいか自分の周りの猫にたいする執着心というか不幸な猫を見かけると猪突猛進的に解決しようとしてしまう。
ふとしたことでこの四元さんに弱みを握られてしまった主人公が四元さんにむりやり連れ回されあるいは四元さんの後始末をするために奮闘することになる。
四元さんの行動は、行動を起こしたくなる気持ちの部分だけでいえばたしかに理解はできるけれども、猫を助けるための実際に起こしてしまう行動はというとちょっと引いてしまうくらいに行きすぎな行動で、かといって嫌な人間かというとそうでもなく、実際に関わり合いたくはないけれども、自分と関わることがないのであればちょっと許してもいいかなと思ってしまう。そんなふうに思ってしまう点でいえば僕も主人公と同じような人間なのかもしれない。
猫を助けるということが引き金となりながらもそこからは、わりとシビアな犯罪に結びついたりとミステリとして面白い。そしてなおかつ主人公の成長物語でもあり、最後の話まで来ると四元さんとの別れが寂しくなる。
暴走主婦、四元さんの暴走っぷりを楽しむ本だ。

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