小泉喜美子の処女長編。
書かれたのは1962年、今から50年以上も昔のことだ。
50年以上も昔で、当時の風俗描写でありながらも読んでみると古びていない。
もちろん古いと感じさせる部分はあるけれども、それは単に古いだけであって、今でも通用する古さだ。
著者がどこまで意識してそういうふうに書いたのかはわからないけれども、カータ・ブラウンやクレイグ・ライスが好きな著者だけあって、軽ハードボイルド・ミステリとしての完成度が高い。
どことなく都筑道夫の初期の作品を彷彿させる部分があるのも多分、そんなところからかもしれない。
あくまで、軽ハードボイルドなので、意表を突く展開や、あっと驚くどんでん返し、意外な犯人といった部分はそれなりにはあるのだが、そういった部分は過剰に期待するのは間違っている。テンポよく軽快に進む物語をただ楽しめばよいのである。
先にも書いたとおり、カータ・ブラウンやクレイグ・ライスのミステリが好きな人にはおすすめできる作品だ。
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