ようやく1巻の冒頭で起こったアルパカ殺し、いやアルパカ喰殺事件に決着がつく。
一時はアルパカ殺しは物語を駆動させるためだけの装置にすぎず、真相はあきらかにされないまま突き進んでいくのかと思ったりもしたけれど、いろいろな意味で予想外の形で決着がついた。
犯人そのものは周到な伏線が張られていたというわけではないので意外というわけでもなかったが、サイコパスに近い犯行動機というか、この世界だからこそ成立する動機であり、それはこの世界の危うさに結びついていて、それ以前のエピソードで語られていた肉食動物と草食動物との共存の危うさの問題に密接に結びついていく。
主人公レゴシもハイイロオオカミで肉食動物であるために、この問題から逃れることはできず、肉を食べないということと肉を食べるということ、肉を食べることによってのみ得ることのできる物があるということに気付かされる。それは肉を食べることによってのみ初めて得ることのできる強さで、肉を食べないという決断をしたレゴシには得ることのできない力だ。
肉を食べた犯人、肉を食べないレゴシとの間の力関係は圧倒的差があり、犯人はレゴシがたどり着くことすらできない高みにいる。
どうなるのか、どう決着をつけるのか、気になるなか、レゴシはまさかそうきたかという行動をする。というか作者はそういう決断をさせる。
それはこの世界がある種、偽善で成り立っているのだという作者の考えなのかもしれない。だからその偽善の部分を主人公が越えたことによってレゴシを中心としてこの世界の構造そのものが変わっていくのかもしれない。
一線を越えたレゴシが今後どうなるのかは次の巻を待たなければならないのだが、それはさておき、犯人とレゴシとの対決は少年漫画の王道パターンでもある拳で語るという方法論が取られていて、いやまさか少年漫画の王道を見せられるとは思わなかったという驚きもある。
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