長編『悪いうさぎ』を最後に終わってしまったと思っていた<葉村晶>シリーズが2014年に13年ぶりに新作が出て、さらにその後、短編集も出て驚いたのだが、さすがにもうしばらくは出ないだろうと思っていたらあっさりと新作が出たので驚いた。しかも今度は長編だ。
ということで、普通ならばこんなに立て続けにでると不安にもなるかもしれないが、そんな気持ちになどなることもなく、むしろ期待感ばかり高まって読み始めた。
あいかわらず、主人公、葉村晶はギリギリの生活をしていて、そんなことで大丈夫なのかとこちらが心配になるほどなのだが、とうの本人はそれなりに心配して悩みこそすれどもそれほど深刻そうでもなく、そういった点ではタフだなあとおもう。
めずらしく割の良い仕事の依頼を受けたわけだが、そこは意地悪な作者というとりも不運な探偵という設定上、次第に割の悪い依頼になっていくあたりが、読んでいてにやりとしてしまう。最初に大きな事件があるというわけではなく、少しずつ何かが歪んでいくという展開は、それと同時に主人公も少しずつ不運に見舞われ、何かが起ころうとしているけれども、同時にすでに起こってしまった出来事を主人公と一緒に追いかけていくという面白さがある。
結果として最初は単純だった人間関係も複雑に絡み合い、さまざまな思惑の中で悲劇に結びついてしまうという後味の悪さは、湿っぽさがないおかげで独特の読後感を残す。
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