『刑事ファビアン・リスク 顔のない男』ステファン・アーンヘム

かつての同級生が次々と何者かによって殺されていく。
捜査の上であがってきたのはその同級生達にいじめを受けていた人物。そして彼は数年前に行方不明となっていた。
はたしてその彼が30年経って、自分をいじめていた人間に復讐をしはじめたのだろうか、それとも真犯人は別にいるのか。
北欧ミステリという社会問題を中心としたミステリが多いという印象だが、この本は北欧ミステリでありながら、北欧諸国独特の社会問題は扱っていない。そこにあるのはどこの国でも起こるいじめである。
しかし、それさえも物語においては添え物でしかなく、両手を切断して放置して殺害、両足を潰して放置して殺害、口から胸元まで切り裂き、舌をネクタイのごとく引きずり出して殺害、等、ひたすら猟奇的な殺害が繰り広げられていく。
主人公の刑事、ファビアン・リスクもこの殺害された被害者と同じクラスメートで、そして彼自身も殺害の対象とされる。
社会問題など相手にしない作風で、とにかく犯人は恐るべき方法で同級生を殺害しまくっていく。なおかつ容疑者の幅は狭まらない。というのも物語の途中で一番の容疑者であるいじめを受けた人物さえも殺されてしまうからだ。
というわけで、犯行の動機というのも問題となるのだが、これに関しては作者はぬかりなくあからさまに犯人の動機を明らかにしておいてある。さらにいえば犯人像でさえも最初から明らかにしてあるのだが、本格ミステリではないので犯人がだれなのかを当てるということはできない。
ユニークなのは女性刑事がたくさん登場し、活躍をすることだ。
そういった点においては社会問題は扱わないけれども、北欧社会の現実というものはしっかりと描いている。

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